安政三年(1857年)
作詞:三代目 瀬川如皐
作曲:二代目 杵家勝三郎
録画 2023年4月
夫れ月も鞍馬の影うとく、木の葉おどしの小夜嵐、物騒がしや貴船川、天狗だをしの夥しく、魔界の巷ぞ恐しき爰に源家の正統たる、牛若丸は父の仇、平家を一ト太刀恨まんと、夜毎詣づる多聞天、祈念の疲れ岩角に、暫しまどろむ肱枕
思ひ出せば我未だ三才の時なりしが、母常盤の懐に抱へられ、伏見の里にて宗清が、情によりて命助かり、出家をせよと当山の、東光坊へ預けられしを、数へて見れば一ト昔、十余年の星霜経れば、稚心に忘れずして、今目のあたり見たる夢、それにつけても父の仇、剣道修業なすと雖、我一向の生兵法、願へば神の恵にて、本望とぐる時節を待たん、イデヤ琢磨の修業をなさん
木太刀かまへて身がまへなす、時しも俄に風起り、天狗礫のばら/\と、鳴動なして凄まじし、遥かの杉の梢より、又もや怪しの小天狗、木太刀うちふり立向へば、シヤ小賢しと牛若丸、つけいる木太刀を払ひ退け、上段下段、さそくの働き、勝負如何にと霧隠れ、うしろに伺ふ、僧正坊、勝り劣らぬ、両人が木太刀の音は谺して、めざましくも亦勇まし
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